社会環境の変化や法改正により、働き方や業務の改善を進めている企業が多くなっている中で、RPAに興味や関心を抱いたことはあるでしょうか。

RPA導入を検討しながらも、様々な課題にぶつかっている企業も多いのではと思います。

そんな境遇にいらっしゃる方には、今回取材を行ったNECソリューションイノベータの前田さん、大岡さん(以下敬称略)の体験を是非読んで頂きたいと思います。

(大岡さんはNECマネジメントパートナー社でRPA推進センター長を務め、定年後にNECソリューションイノベータ社に勤務)

 

インタビューの内容を二部構成でお届けしていきます。

今回は第一部です。

 

(左から 弊社後藤、大岡さん、金子さん、前田さん、弊社坂本)

 

目次

 

NECグループが“RPAの推進を目指したキッカケ”と“目的”を教えてください

前田:2016年に大岡さんから「RPA技術を活用した業務効率化のプロジェクト」に誘われ、面白そうだと思って引き受けました。

 

大岡:NECマネジメントパートナー(以下、NMPと略)は、NECグループの間接業務を行う会社で、ルーティン作業が多いことから、RPAを利用することでたくさんの業務効率化ができるのではないかと考えていました。

そこで、プロジェクトマネジメントで高い成果を出していた前田さんと一緒に取り組みたく声をかけたのです。

 

前田:RPAの企画立上げ当時はわずか3人で始まった活動でしたが、翌年度にはトライアルが進み、2018年4月には推進センターが設立されるほどの規模へと急成長しました。

そして、NMPから始めたRPA開発・導入の展開はNECやNECグループにも広がり、2023年3月時点で約1500ロボットを運用するまでに拡大しています。

推進センター設立と初代センター長となった大岡さんの手腕が、NECグループのRPA推進の大きな一歩となったのです。

 

RPAをスピーディーに展開するうえで重要なことはどのような事でしたか

前田:まずは、RPA導入効果の高い業務を選定し、早期に効果を享受させ、社内にRPAを定着させていくことが優先だと考えました。

そこで、年間500時間以上の削減効果が得られ費用対効果が高くなると試算した、経理や調達、営業サポート業務を中心にRPA化を進めました。

RPAをスピーディーに推進していくうえで特に重要だと感じたのは、“トップダウン(組織・チームの力)とボトムアップ(ユーザー側の力)が噛み合う”ことです。

効果の高い業務をRPA化し、業務効率を上げ、NMP社内で表彰されたことで役員クラスの認知度が向上し、RPAの活動が認められました。結果、2018年4月にRPA推進センターが設立され、トップダウンで推進していく体制が整いました。

一方、ボトムアップとは、“実際にRPAを体験したNMPの方々が、NECグループの各社員に向け発信する“という啓発活動を指します。

例えば、社員自らがRPAを使用し業務効率化した経験から、RPAの活用で起きる様々なノウハウを発表する「らくらくツールサミット」を半期に1回開催するなど、さまざまな啓発活動をしました。地道な啓発活動を重ねたことにより、RPAがより身近なツールとして捉えられるようになっていったと考えます。

このように、トップダウンとボトムアップ両輪が噛み合う事で、展開がスピーディーに進んでいきました。

 

RPAエンジニアの育成に課題を感じている企業が多い中、技術者をどのようにアサインし推進させたのですか

前田:私はRPAのプロジェクトに参画するまでは、通常のシステム開発のPJを担当していました。

そこで一緒に開発を担当してきた信頼のおける開発者に声をかけ、RPAのプロジェクトに参画してもらい、RPAエンジニアとして育成を進めていきました。

誰もがRPAの開発は初体験ではありましたが、これまでに培った高い技術力を持つメンバーですから、すぐにRPAの技術も習得し、効率の良いロボットを開発できるようになりました。

並行して、開発の標準化も行い、属人性の排除と品質維持を図りました。

さらに、ヒヤリハットの登録と改善、振り返り会を行う事で改善プロセスを回し、技術者の育成にも力を入れました。

こうして立ち上がったプロフェッショナルチームが、コストを抑えながらも難易度は高いロボットの開発を進めていくことになります。

一方で、「効率化したい業務」を社内に広くヒアリングしたところ、年間の削減効果時間が200時間~500時間程度の中規模な業務も多くあることが分かりました。

しかし、中規模な業務への対応で課題となったのが開発費です。このレンジの開発をプロフェッショナルチームが行うと開発費用と削減効果が釣り合わず、効果を享受しにくいことが分かりました。

そこで派遣会社と連携し、新たにこのレンジを開発するLCR(LowCostRPA:略してLCRという造語)チームを立ち上げることにしました。

しかし、単純に派遣社員の方にRPA開発を行って頂くだけでは品質維持が難しく、開発費用を抑えにくくなることもあるため、教育を企画しました。

今までに培った開発標準や蓄積した開発ノウハウを基に育成カリキュラムを作成し、新しく参画される派遣社員の方に向けた3週間程度の教育を実施して、高いレベルでロボット開発が行えるLCRチームの人材へと育成していったのです。

このようにプロフェッショナルチームとLCRチーム2つのチームをうまく活用し、効率化できる業務の範囲を更に広げていきました。

 

2021年度当時 (時間は年間)

①500h以上=プロフェッショナルチームが対応

②200h~500h=LCRチームが対応

 

大岡:しかし、削減効果が200h以下の雑多な業務に関しては、LCRチームでも費用対効果が出しにくいため、その業務の担当者自らがRPA化を図っていくのがベストです。

しかし、普段の業務が多忙でなかなかRPA開発まで手が回らないなどの理由で、効率化が進まないのが現在NECグループの抱える課題ですね

 

前田:はい、私も同じ課題を感じています。

ロボットは、

・時間などをトリガーに自動で動く”自動実行型”

・ボタンを押すと動く”手動実行型”

の2パターンに分類されます。

削減効果が200h以下など、雑多な業務は主に手動実行型のロボットに分類されます。

私はNECグループ外のお客様に向けたRPA開発・導入支援も行っているのですが、多くの企業では手動実行型が先行し、自動実行型の割合は多くはないように感じています。NECグループとは真逆の状況が多かったです。

RPAが社内に浸透し、展開が加速している企業では、日々業務を行いながらも、自ら手動実行型のロボットを開発し、内製化を進めている印象を持っています。

最近よく耳にする「RPAの市民開発」と呼ばれる現象です。私たちも市民開発に成功している企業に倣いたいのですが、なかなか思うように進まず、大岡さん同様に課題に感じていますね。

 

RPAの数が増えてきた今、NECグループとしての“戦略”はありますか

前田:はい、先ほどお話した「市民開発の推進」という大きな課題があり、それをどうにか進めたいという想いもありますが、同時にRPAを導入するNECグループ企業をさらに増やしたいとも思っています。

これまでは、主にRPA推進センターの母体となっているNMPを中心にRPAが広がっていきました。NMPに続き、弊社やNECでも展開は進んでいますが、まだまだ効率化できる業務は多く残っていると思います。

また、導入が進んでいないNECグループ企業もあり、私たちのRPA開発・保守・運用チームで今まで培ったノウハウをもとに、RPAの輪をもっと広げていきたいと思っています。

ここ数年はRPA+α、例えば、RPA+AI-OCRやRPA+AIなど、インテリジェントオートメーション領域の活動も多く行っています。こちらももっと広げていきたいですね。

また、最近ではSalesForceやServiceNowのようなクラウドネイティブなアプリケーションとの連携も重要となってきています。

このようなアプリは連携可能なAPIが数多くあり、RPAでこれらのAPIを呼び出し、データ登録やダウンロードなども行う事が出来るようになっています。

これにより、従来のようにRPAで画面を操作しデータ登録等の作業を行うよりも、操作や作業ミスの少ない安定したフローを作成することができるようになります。

こういったアプリとRPAの連携対応にも注力し、お客様のニーズに応えていく活動も並行して行っていきたいです。

 

大岡:まだまだRPAは画面操作による打鍵が多く、入力ミスなどの不安要素も多いですからね。

 

APIが適しているかどうかの判断基準はどのようなものですか

前田:最近のアプリケーションは、APIが事前に用意され、API経由でデータ登録等が行えるため、RPAはそれらを活用します。

一方でレガシーシステムはAPIが提供されていない場合が多いため、ロボットが人と同じように画面操作を行いながら業務を遂行するしかありません。

レガシーToクラウドネイティブ、レガシーToレガシーなど、それぞれの連携の仕方により、APIを活用するのか、画面操作を選択するのかを決めて行く必要があります。

 

 

今回は、RPA推進を始めたキッカケや社員へ浸透させた実例、技術者のピックアップ方法等を中心にお話いただきました。

1500個のロボットを作ったNECグループですが、スタート時はわずか3人で始まったという背景には大変驚きました。

全てが順調に進んだわけではなく、そもそも「開発するターゲットはどうするのか」「どのようにメンバーを育成していくのか」という課題に直面していたのですね・・・!

 

次回は第二部となります。

RPA導入による削減効果の“見える化”や”開発後の課題”についてお話していきます。

第二部:NEC ソリューションイノベータと NEC マネジメントパートナーが牽引する RPA 推進セ ンターが、NEC グループへの RPA 導入推進と定着化の為に向き合って来たコト~第二部~

 

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