一番搾りや氷結、午後の紅茶、生茶など…みなさんも一度は“KIRIN”の商品を手にしたことがあるのではないでしょうか?

酒類・飲料事業で知られるキリンホールディングスは「食領域」だけでなく、「医領域」、「ヘルスサイエンス領域」で事業を展開しています。

2019年に発表した長期経営構想「KV2027」では、2027年までに「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを目指すと策定しました。

イノベーションを実現する組織能力の一つとして「価値創造を加速するICT」を掲げ、DXによる新たな取り組みに挑戦しています。

その取り組みが評価され、昨年には経済産業省と東京証券取引所が発表した「DX注目企業2022」※に選定されました。

※「DX注目企業2022」:企業価値貢献部分において注目されるべき取り組みを実施している企業が選定。

 

そんな今大注目のキリンホールディングスが行うDX推進について、経営企画部DX戦略推進室ご担当者様に質問させていただきました!

全2回で更新する今回の取材記事、

前編ではDX推進に取り組む背景やその方法、今後の展望などを、

後編ではDX人材の育成方法や求められる人材像についてお届けします!

 

▼後編【来たれ、「DX道場」!キリン流、DX人材育成方法とは】

来たれ、「DX道場」!キリン流、DX人材育成方法とは

 

 

✅あわせて読みたい

以下の資料にキリングループのDXに関する取り組みについて詳しく載っています。

より理解が深まるので、あわせて是非ご覧ください!

資料:【キリングループのDXに関する取り組み】※2021年9月実施「DX戦略説明会」

https://pdf.irpocket.com/C2503/xl10/uahz/vqFd.pdf

 

参考:・キリンホールディングス ニュースリリース 【キリンホールディングスが「DX注目企業2022」に選定】https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0608_01.html

・経済産業省 ニュースリリース 【『DX銘柄2022』『DX注目企業2022』を選定しました!】https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607001/20220607001.html

 

目次

1.DXに関する取り組みについて

2.「目標達成へのロードマップ」について

 

1.DXに関する取り組みについて

DX推進に取り組むことになったきっかけはなんですか?

キリングループでは、かねてより営業、生産、マーケティングなど、様々な領域において、デジタルICT部門を主体としながらも、デジタルICTに関する取り組みは行っておりました。

長期経営構想「KV2027」(2019年発表)を策定していた2017年頃、日本国内ではデジタルマーケティングの次の流れとして、デジタルトランスフォーメーションが注目されるようになっていました。

 

我々の主要な酒類・飲料事業領域において、プロダクトそのものがデジタル化される可能性は低いものの、お客様との接点やものづくりの現場においては、今後デジタルを活用したプロセス変革、価値創造が欠かせないと認識しています。

そこで、KV2027においてイノベーションを実現する組織能力の一つとして「価値創造を加速化するICT」を掲げ、グループ全体で取り組みを加速させるための、推進体制づくりや人財育成の取り組みを開始しました。

 

 

どのような課題意識がありましたか?

世の中のデジタル化の流れが加速していく中で、お客様に対して新たな価値を創出していくためには、デジタルICT技術の活用は不可欠だと考えていました。

 

しかしながら、グループ全体としてDXを推進していくにあたり、従来のデジタルICT部門を主体とした体制や、現状の従業員の考え方・スキルではDXの取り組みをうまく進めることができず、結果として持続可能なビジネス体制を維持できなくなり、競合劣後の状況に陥るリスクがあることを課題と捉えておりました。

 

このような危機感の下、グループ全体でのDXを加速させるために、課題に対してあるべき姿を描く「企画構想力」を伸ばし、デジタルICT部門主体ではなく「現場主体でDXを推進していくこと」を重視し、DXに関わる組織体制の構築とその担い手となる人財の確保・育成を開始しました。

 

 

長期経営構想「KV2027」を元にトップダウンで進められてきたのでしょうか?

キリングループ全体の取り組みとして、社長を含めた役員の強いコミットメントの下で進めています。

イノベーション無くして、会社の持続的な成長は成し得ることはできず、その中ではデジタルICTを活用した取り組みが必要不可欠であることを、トップメッセージなどでも明確に発信しています。

 

2020年4月にキリンホールディングス経営企画部内に「DX戦略推進室」を設置し、グループの全事業会社や業務領域のハブとなりながら、横断的にDXの取り組みを推進してきました。

 

その他にも、DXの取り組みをグループ横断で加速させる「グループDX推進委員会」の立ち上げや、全従業員を対象としたDX人材育成プログラム「DX道場」の開設など、グループ全体で体制づくり、人財育成の取り組みを進めています。

 

(引用:https://pdf.irpocket.com/C2503/xl10/uahz/vqFd.pdf)

 

 

グループDX推進委員会にて、メンバーはどのように選出したのでしょうか?また、グループを横断しての取り組みは統率をとるのが大変かと思いますが、その分得られた効果も大きいのでしょうか?

各事業会社の経営戦略会議などに出席し、デジタルICT活用の必要性・重要性を各社の上位層に直接訴えることで、事業・機能部門での理解を深めてもらった上で、それぞれの場所においてデジタルICTの経験やスキルではなく、プロセス変革の取り組みを構想し、主体的にリードできる方を選出してもらっています。

選出された各事業会社の、企画部門の責任者や機能部門の責任者に加えて、デジタルICT部門の責任者、さらにはデジタル管掌役員を委員長として、グループDX推進委員会を運営しています。

 

各事業における経営課題は様々であるため、単純にグループ横断の取り組みを一つに決めて推進することは困難でした。

ただし、DXを推進するにあたっての考え方や、各社での推進体制の確立、中長期のありたい姿を描くことなどについては、共通で議論でき、各社の知見に資する部分もあったため、テーマを工夫して議論を行ってきました。

 

各事業での課題や状況に差異はありましたが、ある意味幅広い課題を抽出することができ、多面的にDXを推進することができました。

また、複数の事業を跨いで抱えている課題が一致した場合には、強い推進力を持って、課題解決に繋げることができました。

 

 

ご担当者様個人として、理想のDX像はありますか。

キリングループは嗜好性の高い商品が多く、お客様の好きという感情を大切にしています。

現時点では、デジタル技術でお客様の感情を直接読み取ることは難しいですが、お客様動向に関わるデータの活用や、デジタルを活用した高品質な商品づくりや新たなビジネスモデルを通じて、お客様の好きという感情に少しでも近づいていきたいと考えています。

 

また、DXの取り組みは、デジタルICT部門など、特定の組織の限られた人員が主導で推進するものだと捉えられがちですが、『お客様や現場に近い従業員が自律的に企画構想から取り組み推進まで進めていくものである』という企業風土を作っていきたいと考えています。

 

例えば、財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)の知識が、社会人の常識になっているように、デジタルリテラシーも社会人の常識になっていくと考えており、グループの従業員のデジタルに対するハードルを取り除くための取り組みを更に行っていきたいと考えています。

 

 

 2.「目標達成へのロードマップ」について

目標達成へのロードマップでは2024年までに業務プロセス変革を一巡、DX人材1750名育成などを経て、2027年にDXのゴールを掲げていましたが進捗はいかがでしょうか?イメージ通りに進んでいる部分、またギャップを感じている部分があれば教えてください。

(引用:https://pdf.irpocket.com/C2503/xl10/uahz/vqFd.pdf)

 

2024年までの目標に対して、予定通り進捗している状況です。

「全ての事業・機能部門で自律的にデジタル技術を活用してプロセスの変革やビジネスの創造を行えている」という状態を目指して、様々な取り組みを進めております。

キリンにおけるDXが「デジタルICT部門固有の限られた領域の取り組みではない」という共通認識がグループ全体に浸透しつつあります。

 

各事業会社では、自律的なデジタルの活用によってこれまでの業務プロセスを変革する取り組みや、新しい価値を提供する取り組みなど、現場やお客様に近いところでのDXが検討されはじめています。

 

また、人財育成については、多くの従業員からDX道場に想定を上回る応募をいただいている状況で、前倒しで目標を達成できる見込みです。

 

 

2027年に向けて更に取り組んでいきたいこと、今後の展望を教えてください。

DXは経営戦略そのものであり、終わりのない取り組みだと考えています。

 

これからも益々加速していくと考えられるデジタル化の流れ、テクノロジーの進化に合わせて、我々の目標や取り組みも常にアップデートしていくことで、2027年までに「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」という、キリングループとしてのビジョンの実現を、DXの推進によって確実なものにしていきたいと考えています。

 

現在は比較的着手のしやすい業務効率化に関する取り組みが多く進められていますが、価値創造や新規ビジネスの取り組みも増やしていきたいと考えています。

簡単な取り組みではないですが、スモールサクセスを積み上げ、その成功体験を基礎としてグループ全体へと波及させていきます。

 

 

 

会社全体でDXを推進するためには、ビジョンの共有や、専門部署に任せきりにするのではなく社員全員に自分事として捉えてもらうことが重要なのだと感じました。

変わりゆく社会に適応するには知識や技術を身に付け、新たな価値を創造していく必要がありそうです。

ロードマップの進捗からも分かるようにキリングループのDX推進はうまくいっているとのことなので、KV2027の実現に向けて今後さらにどんな取り組み、変革が行われるのか楽しみですね!

 

次回はキリングループが力を入れる“DX人材の育成”についてたっぷりお届けします!

 

DX人材の重要性は感じているものの、その育成方法に悩んでいる会社も多いのではないでしょうか?

また、自分がDX人材になるには何をしたらいいかわからない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな方々の課題解決のヒントになれば幸いです。

 

・独自のDX人材育成プログラム「DX道場」、その内容は…?

・キリングループや社会に求められるDX人材とは…?

気になる疑問にお答えいただきました!

 

次回も是非ご覧ください!

 

 

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