昨今、RPAを導入検討する企業が増えていますが、社内に定着している企業はまだ少ないとされています。

国内でも先駆けて、これまでに1500体ものロボットを作り、RPAの効率的な開発とNECグループへの推進を成功させたNECマネジメントパートナーのRPA推進センターは、NECグループ内への導入と普及を成功に導いたのか。

数々の体験をNECソリューションイノベータの前田さん、大岡さん(以下、敬称略)にお話しを伺いました。

(大岡さんはNECマネジメントパートナー社でRPA推進センター長を務め、定年後にNECソリューションイノベータ社に勤務)

今回は最後となる第二部となります。

【第一部】NECソリューションイノベータとNECマネジメントパートナーが牽引するRPA推進センターが、NECグループへのRPA導入推進と定着化の為に向き合って来たコト~第一部~

 

目次

 

RPAをより推進させるためには、何が必要だと感じますか

前田:現在も「ロボットを作ってほしい」という要望は多いですが、RPA+AI-OCRの導入やRPA+AI、RPA+Tableauの活用が広がりつつあるため、第一部でも触れたように、RPA単体での適用だけでなくRPA+αの適用が進んでいくように思います。
従来はRPA=デジタルレイバーと捉えている方も多かったと思いますが、本来はAIなどの他の技術を掛け合わせて、自動化や効率化を図っていくのが“デジタルレイバー”の本来の姿だと思います。

私は7年ほど、RPA含むデジタルレイバーの展開を推進してきましたが、この領域はアイデアと最新技術への探求が重要だと考えています。何と何を組み合わせると、どのようなことが実現できそうか?新しい技術要素とRPAを組み合わせてどんな業務が改善できるのか?そのような探求心が常に必要だと感じています。

 

現在挑戦している新しい取り組みを教えてください

前田:今までは、どちらかというとスタッフ業務にRPAを適用するケースが多かったですが、間接業務以外の業務への適用も進めています。
例えば「PMOBot」という企画を立上げ開発し、社内利用を開始しました。
一般的にPMO(Project Management Office)と呼ばれる組織が行う、日々の進捗・タスク管理や品質状況の確認、集計作業や報告資料の作成などの業務はルーティンワークが多いので、RPAで支援可能な作業がたくさんあります。

そこでタイムマネジメント領域等、複数のマネジメント領域でそれぞれロボットを構築し、全自動で夜間に対応する「PMOBot」と呼ばれるロボット群の社内利用を加速させています。

また、労務管理などのルーティンワークもロボットに置き換え、日々の作業負担を軽減する「便利Bot」という企画も始め、ラインナップを増やしています。
これらのロボット群には上述したRPA+AIなど、RPA+αの要素も多く含まれています。

 

RPA導入による削減効果の「見える化」について取り組みを教えてください

前田:現在”稼働状況”と”投資効果”の2つの観点で見える化を行っています。

稼働状況の見える化については、【日々稼働しているロボットが停止していないか】【待ち行列が発生して停滞していないか】【長時間走行をしていないか】を監視ロボットが巡回して確認し、その状況をTableauで可視化をしています。Tableau上で可視化した情報は、私たち運用側だけでなく、ご利用者様にも公開することで「本当に業務をやってくれているのかな?」「時間になるとちゃんと動いているのかな?」など、ご利用者様の不安に対する改善に役立てています。

投資効果の見える化は、非常に難易度の高い「見える化」施策でした。

NECグループでは、約25万時間の削減効果を出したと伝えて来ました。
従来は、AsIsの時間とToBeの時間の「差」を削減効果としてカウントしていました。

各業務のAsIs時間は、机上で算出。ロボット化後のToBe時間は、ロボットで置き換わるプロセスをゼロ工数としてカウントし、人手で残った作業のみを集計し算出していたのです。

しかしロボット数が増えるにつれて、「効果測定方法はこれでいいのか、25万時間は本当に正しいのか」という意見があがり、現在は、より正確に効果測定を行うために、ロボットが実際に処理した件数から、リアルタイムに削減時間を算出し、Tableauでその削減効果を公開するよう変更しています。

現在、全ロボットへの適用を順次進めているため、実際の削減効果がどの程度になるのか、公開にはもう少し時間がかかりそうです。

よく削減効果と並んで”処理スピード”にフォーカスし「ロボットは人より速く処理出来ているのか?」と聞かれることも多いのですが、私個人の見解では処理スピードに執着するのはあまり良い考え方ではないと思っています。ロボットは休みなく仕事をしてくれるので、1回の処理時間が人とあまり変わらなくても、人には難しい継続的な作業を出来るので速さはあまり重要視していません。

どうしても短時間で処理件数を多くする必要があるなら、同じロボットを多重型のロボットにカスタマイズして、複数ロボットで処理すれば解決できそうです。

 

多くのロボットが動いていますが、エラー時のメンテナンスはどうしているのでしょうか

前田:NECグループでは、日々多くのロボットが稼働しているので、ロボットの稼働状況を運用ロボットが巡回して見守っています。
変な動きをしていると、私たちにアナウンスしてくれる仕組みを作っています。
この運用ロボットは、NECグループのように自動実行型のロボットが多数稼動しているケースでは非常に有効な対策なのですが、第一部でもお話した通り、多くの企業では手動実行型のロボットが多く、市場ではまだ必要とされることが少ないというのが現状です。

しかし、徐々に自動実行型のロボットも増えてきているようなので、私たちもNECグループだけでなくお客様に向けたご利用提案も進めていきたいと考えています。

 

開発後の課題や失敗点などはあったのですか

大岡:一番課題だったのは、RPAに対する誤解を減らすことです。「RPAにしたら100%動くだろう」「スピードが速くなるだろう」といった誤解が多いです。
そこでRPA推進センターの開発・運用・保守を担うチームでリカバリーの仕組みを作り、極力異常終了しても後続ロボットが稼働停止しない仕組みや、多重化などによる処理件数の向上施策を行ったことで、やっと運用が安定しました。

 

前田:失敗点としては、RPAをシステマティックに作りすぎてしまったということです。
もともと私たちはシステム開発の経験者ですから、高い品質で止まらないシステムを意識して目指してしまいます。ですが、RPAの良さは短期間で開発費用を抑えて構築し、すぐに運用できることです。

エラーパターンを丁寧に拾いフォロー処理を入れるなど、RPAをあまりに作り込みすぎると開発費用がかさみ、最終的には費用対効果が出ない可能性があります。作り込むよりも【正常系処理はRPA】【イレギュラーパターンは人手でリカバリー】というのが理想と考えます。
ユーザー側からすると“RPA”というより“システム”を使っている感覚になってしまい「なんで止まるのか」「システムってこんなに止まらないだろう」と逆にRPAの理解が進まず、システム同等と捉えられてしまう状況を引き起こしてしまいました。
そのあたりがやりすぎてしまったかなぁ、と思います。

 

大岡:普通に動いて当たり前の感覚を持たれていたのかと感じます。
一番困るのは、止まってしまった際に「ロボットがやってくれることを前提に人員を外したのにどうしてくれるんだ」という意見です。それを無くすための啓発活動も継続しなければと思っています。

 

前田:そもそも僕たちがデジタルレイバーで実現したいのは、削減効果だけではありません。
人がやらなくても良いルーティン作業を減らし“人でしか出来ない、本来人がやるべきより戦略的で高付加価値な仕事をどれだけできるか”という部分にRPAがどれだけ貢献できるか、という事が重要だと考えています。
この「貢献」を見える化出来たら本当に良いと思っていますが、こちらはまだ解がありません。難易度の高い作業ですが日本のRPA推進のためにはやらなければならないと思っています。

日本の民事系でのRPA導入率は3年位前から30%程で停滞しています。海外より展開が進まないのは、【経営層のITへの理解】や【DX推進人材不足の問題】【そもそも日本ではDX推進者の人物像が明確になっている企業が少ない】などの問題が影響しているように感じます。

 

大岡:どういう意図をもってRPAを入れるのか、経営層や現場業務の責任者が真面目に考えないといけないのですが、現状そこまで考えている人は少ないですね。

RPAの活用を支援し、リソースシフトに貢献するソリューションを提供。
NECソリューションイノベータでは、NECグループ内でのRPA普及の経験とノウハウを生かした「NEC業務プロセス革新支援ソリューション」を、NECグループ外のお客様にも提供しています。ソリューションの紹介以外に、RPAに関するコラム情報も掲載していますので、ぜひご覧ください。

「NEC業務プロセス革新支援ソリューション」

 

 

近年”RPA”は普及しつつありますが、当時は現在ほどの知名度がない中で開発とグループ内への普及を成功させるのは、途方もないミッションだったのではないかと感じます。
RPAに対する誤解を一つ一つ解決していきながら約25万時間もの業務時間を削減したというのは、今後開発や導入を検討している方々に多くの希望を与えるのではないでしょうか。

 

 

全二回に分けお届けしたインタビュー記事を、最後までご覧いただきありがとうございます。
そしてなにより、インタビューに応じてくださったNECソリューションイノベータの前田さん、大岡さん、貴重なお時間ありがとうございました!

 

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