どんな業務がRPA化できるの?

大森:導入の際に悩んだことはありましたか?
安西:最初はどんな業務がRPA化できるかわからなかったことですね。
導入を決めた2年前、RPAという言葉は広まってきていましたが、金融や電気系、IT系など、もともとITリテラシーの高い企業が導入している状態だったんです。
食品メーカーでRPAを使っている実績は少なかったため、適している業務をどう選択するか、探していくところは悩みました。
大森:そんな中、どんな風に業務を絞り込んで行ったのでしょう?
安西:感覚的なところではわからないため、RPAでできること、できないこと等のマトリクスを作成して業務を分けて行きました。
条件はいくつかありますが、「人の意思が入らない」、「同じことを繰り返し」、「仕事のスタートトリガーがある」などに該当するものがRPA化に向いていると言えます。条件を列挙していく中で、それに会う業務を探しました。
大森:実際の業務に当てはめると、なかなか難しそうですね……
安西:事務作業全部RPA化できるわけではありませんが、ルーチン化、単純事務作業、転記、移し替え、集計のみ等……RPA化できるかは「やってみないとわからない」のです。
結果的に、まずは当時サッポログループマネジメント株式会社というSS(※)を担う会社があり、そこの業務の中で、グループの人事給与計算が該当するのではないか、ということで大きなトライとして
RPA化をしました。
※SSとは、シェアードサービスの略。人事、経理、総務などのコーポレート業務を担う部門のこと。(現在はサッポロビールを中心に各社が担っている)

中央集権、効果のほどは……?

大森:給与計算の業務時間の大幅削減については、1社で始めたことを翌月には13社で導入されていますよね。業務改革はどのように勧められたのでしょうか?
安西:そもそも、人事部門には給与業務、社保業務などがあり、この辺りを業務改革できるのではないか、と目をつけていました。
サッポログループマネジメント株式会社はこのグループ13社分の給与計算を受託している環境にあり、それを20名のオペレーションチームが年間7400時間かけて、業務をこなしていました。
非常に工数として大きな業務だったので、給与計算の業務フローの括りをわけ、その中で、RPA化する部分とBPRの2つに大きく分けました。

安西:図2の前半の部分は業務フローを変えているんです。これが一番のキモです。
本来、RPA導入だけで見ると後半部分を重視してしまいがちですが、上流部分のフローも見直すことで、年間1,800時間の削減を実現できたのです。
大森:RPA導入、というだけでは、ここまでの効果はなかったわけですね。
安西:現在、6500名分(13社分)の給与計算は3つのロボットの組み合わせで動いています。
最初はテスト的に1社だけRPA化しました。残りの12社についてもいっぺんに全部展開し、現在は全部稼働しています。

大森:稼働しているロボットの担当する会社は、どのように決定されているのでしょうか?
安西:スケールです。図2の一番上のロボットは何千人規模の会社で、真ん中は500人規模の会社、その下の段は200人規模の会社、と、会社の規模に合わせてロボットを設定しています。
大森:RPA入れて使っていくのに必要なトレーニングはありましたか?
安西:給与計算出してくる側はRPAはほぼ関係ないので、期日通りにデータ入力してもらうだけでした。
ただし期日までにやることやっておかないと給与の振り込みができないわけですが、今までは若干遅れたり、間違っていても給与担当社員のホスピタリティーで修正する事で成り立っていたものが、ロボットに変わって融通が効かなくなった為、最初の頃は多少影響がありました。
ただ、提出する側にもされる側にも緊張感が生まれ、以前よりもビジネスとしてシビアな関係が築けるようになるなど、プラスの効果にも繋がっています。
大森:逆にきちんとした体制がグループ全体に行き渡ったんですね!!